九州大学大学院医学研究院精神病態医学 行動療法研究室

Laboratory of Behavioral Therapy, Department of Neuropsychiatry, Graduate School of Medical sciences, Kyushu University

強迫症(強迫性障害)とは

強迫症とは、本来は気にしなくて良いあることが頭から離れなかったり(強迫観念といいます)、ある行為をしないではいられなかったり(強迫行為といいます)する病気です。強迫症は、性格の問題と考えてしまい、本人やご家族も気付いていないことも多いようです。

1)強迫観念

繰り返ししつこく頭にこびりついている考えや、衝動(急になにかをしたくなる)、イメージで、不安や不快感を引き起こすものです。取り払おうと思ってもなかなか取り払うことができません。

強迫観念の例
尿や便、汚れやばい菌などに関する過剰な心配
洗剤や有害廃棄物、放射能などに関する過剰な心配
汚染されたものをまき散らして他の人を病気にするのではないかという恐れ
自分や他人を傷つけてしまうかもしれないという恐れ
なにか恐ろしいこと(火事、強盗など)がおこると、
自分が知らぬ間にそういうことをしたのではないかという考え
適切な言葉を使っていないのではないかという心配

2)強迫行為

強迫観念による不安や恐怖、不快感を一時的に軽くしようとする行動です。次第に、強迫行為にかける時間や回数が増え、日常生活に支障をきたすようになると、強迫行為が生じる状況を避けるようになり、日常生活が大きく制限されるようになります。

強迫行為の例
過度なあるいは儀式的な手洗い行為、入浴の中での動作、排泄中での動作を繰り返す
戸締まり、ガスの栓、電気器具のスイッチなどを必要以上に何度も確認する
人に危害を加えたのではないか、危害を加えてしまうのではないかと心配して確認する
恐ろしいことが起こらなかったか、あるいは起こるのではないかと心配して確認する
間違いをおこさなかったかと、何度も必要以上に確認する
何度も同じところを読んだり書いたりする
何度も同じところを行ったり来たりを繰り返す

強迫症は決して珍しい病気ではありません。一般人口中の有病率は2〜3%程度とされています。病状が引き起こす日常生活の問題は多岐にわたることが多く、家族の手助けがないと生活に大きな支障をきたし、本人や家族の生活の質(QOL)を大きく損ないます。強迫症は10代から20代の若い方に発症することが多く、かかると強迫観念や強迫行為に長い時間を取られるため、勉強や仕事に大きな悪影響がでます。

3)強迫性障害の治療

現在の強迫症に対する主要な治療は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を主とした薬物療法、および認知行動療法があります。

SSRIは、うつ病の患者さんが飲む抗うつ薬で、強迫症の約半分の患者さんに効くといわれています。抑うつが強い患者さん、病状が重い患者さんは、まずSSRIによる薬物療法を優先して行う事が多いです。

認知行動療法は、患者さんの病状にあわせてどのような技法を用いるかを主治医と患者さんで一緒に考えていきますが、強迫症の治療に用いる技法の中のひとつに曝露反応妨害法という技法があります。
これは、患者さんに、強迫症の症状が出る状況に敢えて何度も直面してもらい、恐れていることにはならないことを理解してもらうというものです。また、その時に生じた不安や不快感に対して強迫行為をしなくても自然とそれらが軽減していくことを体験してもらうことにもなります。
この方法は、避けていた状況に患者さんが敢えて立ち向かっていただく治療のため、患者さんが自身の病状に対して十分な理解が必要ですが、医学的に治療効果が認められている技法です。

九州大学病院精神科神経科では、行動療法専門外来を設けており、外来での行動療法による治療を実施しています。生活の障害がより強い方には当院での入院治療も勧めることがあります。

お問い合わせはこちらのメールアドレスまで

九州大学病院精神科神経科 行動療法専門外来
九州大学大学院医学研究院精神病態医学 行動療法研究室

bt.group@icloud.com

お問い合わせにいただいた質問に対する回答は、一般的な内容にとどまることをご了承下さい。
実際にお会いすることなくメールにて診断や治療について個別に具体的なアドバイスを行うことには限界が有り、責任を持ったお答えができないと考えております。

©九州大学大学院医学研究院精神病態医学 行動療法研究室